top of page

JAZZ Life始まり編 (3)

練習場所を探す
9. 練習場所を探す

 

サックスを習う教室が決まり自分の楽器も購入した。いよいよサックスの練習がスタートする。上達へのルーチンワークはこうだ。(1)レッスンで習得すべきことを教わる。(2)それを自主練習によって身につける。(3)次のレッスンで練習成果を確認してもらい問題点の改善を行う。ここで練習のメインは自主練習であると認識しなければならない。どんなに音楽センスのある人でもレッスンだけでは進歩しない。自主練習をどれだけ効果的に行えるかが上達の鍵となる。もし自主練習を行えないほど忙しいとしたら、しばらくレッスンも休止した方がよい。そうでなければレッスンが無駄になってしまいサックスへの情熱も薄らぐことだろう。

 

そこで自主練習だが、どこでやるのかを解決しなければならない。まず大切なことは自宅での練習だ。近所迷惑になるので自宅でなど練習できないと思うかもしれないが、そんなことはない。基本的に音を鳴らさない練習ならば幾らでもできる。たとえば新しい曲を覚えるときに自宅で出来る練習は何だろう。

  1. デモ演奏のレコードを聴く、

  2. 楽譜を読む、

  3. デモ演奏に沿って歌う、

  4. 楽譜に沿ってフィンガリングの練習をする、

  5. デモ演奏に合わせて音を出さずにサックスを吹く。

 

これだけの事が自宅で、しかも夜中でもできるのだ。つまり本格的にサックスを鳴らさなければかなりの練習はできる。もちろん音を出さないとミストーンの改善やアンブシュアの練習にはならないので、当然サックスを鳴らす練習も必要だ。また少し難しいが上達すると小さな音で吹くことができるようになるので、そうすると昼間の短時間なら自宅での音出し練習が可能となる。

 

もし自宅に防音室があれば練習場所の問題はないが、普通は防音室にはなっていない。防音工事となると大袈裟なことになってしまう。また個室型の防音室も販売されているが、これも設置するだけのスペースがあればの話になる。残念ながら狭いマンション暮らしの身では防音室での対応はできない。

 

防音という観点からすると、e-Saxという選択もある。e-Saxはサックスを丸ごと覆ってしまうケースのようなものに手を入れる穴が付いていて、サックスを格納するとネックの先が出るような構造になっている。e-Saxについての評判は賛否両論だ。サックスに大きな異物をつけるので色々な意味で抵抗は大きいだろう。しかし日々忙しくしている人にとっては十分に練習時間を取れる方法なのでe-Saxもありだ。価格は5万円ほどだがサックスとセットで安く販売している楽器店もあるので、必要な人はサックスと同時購入を検討するとよい。

 

わたしの音出し練習だが、土日の昼間は自宅で行うこともある。ただしマンションなので非常に気を使う。騒音トラブルは単に音量だけではない。音量は小さくても気になる人にとっては不愉快なものだ。上手な人の演奏が漏れ聞こえるのなら平気かも知れないが、初心者の練習となると聞き苦しいこと間違いない。騒音対策は防音だけでなく、日頃からの近所付き合いも大切だ。日頃のコミュニケーションにおいてサックスの練習をすることを前もって伝えておこう。そして「うるさかったら遠慮なく言ってください」とお願いしておくべきだろう。クレームが付かないので大丈夫だと思ったら大間違いだ。今の日本は心の中で思っていても気軽に話さない社会になっているので、ため込んだ不満が一気に爆発する危険がある。

 

自宅で音出しは控えめなのでサックスの音を創るための練習には不十分だ。思いっきり音の出せる練習場所を確保しよう。学生ならば大学キャンパスで好きなだけ練習できるだろう。社会人のノスタルジックな練習場所といえば河原とか電車のガード下とかが思いつく。そういう場所が見当たらない者としては有料で提供される場所を検討することになる。思いつく所としては下記の場所がある。

  • 音楽教室のルームレンタル、

  • 音楽スタジオ、

  • カラオケボックス。

 

わたしは音楽教室のルームレンタルをよく利用する。ヤマノミュージックサロンのレッスンルームだとサックスを吹く環境が揃っている。ピアノ、譜面台、サックススタンド、それにCDプレーヤーが自由に使えて30分300円+消費税ということで大変重宝している。わたしはルームレンタルで1時間練習している。サックスを始めて最初の数週間は30分でも身体が持たなかった。個人レッスンは30分だが、30分間フルに吹いているわけではない。先生と話したり手本の演奏を聴いたりしているので実際に吹いている時間は半分ぐらいではないだろうか。しかし自主練習となると吹き続けるのでそのうちアンブシュアを保てなくなってしまう。それでも1ヶ月も続けているとだいぶアンブシュアを維持できるようになる。

 

音楽スタジオについては、たぶん色々なタイプのところがあるだろう。大概は本格的な録音機材を備え付けている。わたしの自宅の近くのスタジオはグループで演奏するための部屋が多いが一人で使える部屋もあり1時間800円ぐらいから利用できる。また、事前に予約しておくと真夜中でも利用することが可能だ。これならば自主練習に十分使えると思う。ただひとつ残念なことに室内がタバコ臭かった。想像は付いていたのだが、エレキギターを抱えた若者がたくさんいてロック系の雰囲気が漂っていた。タバコの嫌いなわたしとしては、ここは少しきつい。やはり料金を払うのだから綺麗な空気の中で練習したいものだ。

 

利用しやすいのでカラオケボックスで練習する人もかなりいるようだ。映画スイングガールズではカラオケボックスに7名で楽器を持ち込んで練習して、音が大きすぎると追い出されるシーンがあった。一人サックスなら大丈夫だと思うが事前にお店側に確認をとっておこう。わたしの場合、利用するカラオケボックスの条件は禁煙ルームがあることだ。自宅近辺を調べてみるとカラオケボックスは結構多いが、残念なことに最も近いところは禁煙ルームが無かった。幾つかの店を試してみて落ち着いた場所は、サックス教室にも近いたまプラーザにあるドレミファクラブたまプラーザ店だ。そこは平日の11時から18時までが30分200円でドリンク飲み放題となっている。ここを利用するときは11時の開店と同時にいくのだが、少し遅くなると禁煙ルームが他の人に先を越されてしまうこともしばしばある。禁煙ルームをもっと増やしてほしいものだ。

 

これで音楽教室へ申し込みとサックスの購入および練習場所の確保も済み、準備万端となった。

身体への負担
10. 身体への負担

 

サックスの演奏というものは身体への負担もあり色々なところが痛くなったり疲れたりする。とにかく最初のうちは身体のあちこちに余計な力が入り身体への負担を増長している。リラックスして演奏しなければならないことは分かっているのだが気が付くと必要以上に力が入っている。上級者になれば自然と解消されるのだが、初心者のうちは次のような身体への負担に悩ませられる。

  • 首、肩、背中の痛み、

  • 左手親指の痛み、

  • 右手親指の痛み、

  • 唇の痛み、

  • 口の疲れ、

  • 息苦しくなって続かない。

 

人によってはこの他にも色々な症状が出るころがある。改善の基本は十分に休憩をとることとリラックスして演奏することにある。わたしが最初の体験レッスンを終わったときに感じたことは首が凝ったことだ。とにかく首が疲れる。サックスの重みがストラップを通して首にかかり、親指でサックスを押し出すことによりさらに荷重が加わる。

 

身体への負担を軽減するためにレッスン中の姿勢について見直そう。レッスンにおいて生徒は椅子に座ったまま演奏する。まずはサックスを吹いていない時はサックスを右太股の上に置くことによって身体を休めよう。レッスンではサックススタンドがあっても常にスタンバイ状態にしておく必要があるのでサックススタンドではなく太股の上に置くことになる。吹くときの構えについても身体から離すのではなく身体に接触する方が楽だ。男性の場合アルトサックスのU字管を股間に押し当てるようにする。女性の場合は身体の右側に着けるようなスタイルになる。

 

首への負担の一つとして気が付かないうちにやっていそうなことが手をサックスにもたれさせることだ。手でサックスを保持しているときに手の重みをサックスに委ねていないだろうか。これをすると首への負荷が一気に増えることになる。これは意外と盲点になっているので、ときどき意識的にサックスから手を離すことによって改善されるはずだ。

 

サックス初心者に聞くとやはり首が凝る人が多いようだ。そのうち慣れるとはいうものの女性など筋力の弱い人には大変だ。そのために根本的対策としてストラップを変えるという方法もある。通常のストラップはネックストラップといって首に吊るすようになっているが、ハーネスタイプや肩掛けタイプのストラップがあり、こちらは上半身全体でサックスを支えるため首への負担は軽減される。ハーネスタイプはしっかりしているが着脱が煩わしいかもしれない。見た目がオシャレなものとしてはマーマデュークのフェザーストラップジャズラブのサックスホルダーブレステーキングのストラップなどがある。どれも評判は良いので、首の凝りに悩まされている人は楽器店で実際に試してみることだ。

 

サックスの上達に伴って一番傷める場所が左手親指だそうだ。左手親指はサムレストを押してサックスの位置を安定させている。ところが左手親指の役目はそれだけではない。高音域を吹くときにサムレストの上部にあるオクターブレバーを操作する。中音域のレから上の音を出すときにオクターブレバーを押さえる。つまり左手親指はサックスを支えながら演奏に参加するので、親指の付け根に大きな負担がかかることになる。高音域の音を出す頃になると色々と吹けるので、ついつい休憩を忘れて長時間練習してしまう。まずは無理をせず十分な休憩をとるようにしよう。

 

また左手親指のポジショニングも重要になる。親指が常時オクターブレバーに触れるような位置に置き、レバー操作には軽く間接を曲げるようにしよう。実はレッスン初期の高音域を吹かない段階では左手親指のポジションについての制約はない。そのためサムレストの中央に一番楽な形で親指を置いてしまい、中低音の練習を続けているうちに左手親指に間違った癖が付いてしまう。しばらく後に高音域の練習に入っても左手親指のポジションを矯正できずにオクターブレバー操作にて親指に大きな動きを負わせてしまうのだ。一度付いた癖を直すのは大変だが必要なことなのでしっかり矯正しよう。

 

右手親指の痛みはサックスを支えることからきている。サムフックは右手親指を掛けるための形状になっているので上向きの力を入れてしまいがちになる。そうするとサックスを身体から離したときに右手親指への負荷が大きくなる。サックスを身体に接触させる構え方だと右手親指の負担は少ない。しかし、サックスを身体から離して演奏することも普通にあるので、そのときの対処もしておこう。ストラップが長めだと本来ならば右手親指でサックスを支えようと上向きに力がかかってしまう。したがってストラップの長さを短くして上の前歯でサックスを軽く押さえこもう。そうすると右手親指の力の方向も前向きになる。

 

さて、下唇の痛みや口の疲労になると解決は簡単ではない。それはサックスの演奏法の本質であるアンブシュアへの対応となるからだ。まだアンブシュアが定まらない初心者としては講師の教えに忠実に吹くことだ。ただ最初から取り組むべき事は脱力することだ。とくに高音域を吹くときにリードを締めつけて音を作ろうとしていないだろうか。そこは少し我慢して口の脱力を心がけ、くわえる位置や息の出し方などの適正を探ろう。アンブシュアについてはサックスの練習を続けていくとさまざまな課題に直面し、そのたびに悩むことになるだろう。新しい音の練習を始めると今までできていた音が崩れることもある。力ずくでねじ伏せるのではなくリラックスして適正なアンブシュアを求めていこう。とにかく「脱力」だ。

 

息が続かないことについてだが、最初は誰でも続かないそうだ。呼吸法としては腹式呼吸をリラックスして行うのだが、素早い息継ぎや曲に合わせた呼吸量の調整が必要になってくる。まずはロングトーンの練習を欠かさず行うことだ。ロングトーンはサックスの基本を固めるために必要で合理的な呼吸のコツも身につく。個人的感想だが、管楽器の呼吸法は水泳の呼吸法と似ていると思う。水泳における素早い息継ぎと安定した息吐きも最初は長く続かないが練習を積んでいくといつの間にか平気になってくる。たぶんサックスの演奏でもいつの間にか平気になっているのだろう。呼吸法についてもまずは「脱力」だ。

 

サックスを吹くことは日常生活とは異なる身体の使い方となるので身体に何らかの変調があっても不思議ではない。サックスと長く付き合うためにも身体に痛いところがあれば無理をせずに休憩しよう。休憩というのは身体を休めるだけでなく練習したことを身体に定着させる働きもある。つまり上手に休憩をとれば効率的にスキルが身につくのだ。あせらず日常のペースを維持していこう。身体への負担について色々と書いたが、吹奏楽器を続けることは心肺能力のトレーニングにもなるのでサックスを適切に楽しむことは健康維持のペースメーカーとなる。とにかく楽しみながら練習しよう。

更なる道具の購入
11. 更なる道具の購入

 

さて、サックスの練習を進めるうちに色々な物を購入することになった。まずサックス購入後一週間で買ったものがストラップだ。購入したサックスに付属するストラップは普通のネックストラップだが、ネックストラップだと首が締められて窮屈に感じた。ハーネスタイプや肩掛けタイプだとかさばるので、コンパクトなものということでタツミ楽器のバードストラップを購入した。このストラップは胸のところに鳥の形をしたプレートが付いていて首にかかる紐を押し広げている。これは講師の高橋先生も使用していて、見た目もスタイリッシュで首が苦しくならない。バードストラップをかけるだけで何となく上手くなったような気がする。

 

次に購入したものはチューナーだ。サックスの音程は吹き方によって変化してしまう。その音程は演奏者自身でコントロールしなければならない。そのためには自分の吹いている音の音程を知る必要があり、サックスの練習にチューナーは欠かせない存在となっている。チューナーにも色々な種類があり楽譜台に置くタイプのものや楽器に取り付けるものがある。わたしはヤマハのクリップ式チューナーTDM-37Lを購入した。アルトサックスの場合、このチューナーをネック部分にクリップで留めて使用する。そうするとサックスに固定されているのでチューナーの画面を常にチェックすることが出来る。

 

チューナーに電池を着装して電源を入れると使用可能な状態になる。ここで基準ピッチを確認する。基準ピッチとはラの音の周波数だ。国際基準は440Hzと決められているがTDM-37Lの初期設定では442Hzになっている。その理由は日本のクラシックオーケストラでは442Hzに揃えることが常識になっていてヤマハでもそれに合わせているのだろう。またヨーロッパのクラシック界ではさらに高い周波数を基準にしているらしい。ところがジャズやポップスの世界では440Hzが普通に使われている。チューナーの基準ピッチは変更できるので、440Hzに合わせておこう。また、電池交換をすると基準ピッチが初期値に戻ってしまうので電池交換の際は再度調整しよう。ちなみにサックスの高橋先生からの情報によると、最近のスタジオミュージシャンの設定は441Hzだそうだ。人が違えば常識も変わるので、セッションのときには基準の確認は必要だ。

 

チューナーの使用する前にサックスの基調についての理解が必要だ。アルトサックスはE♭が基調になっており、テナーサックスはB♭が基調となっている。つまり、アルトサックスでドの音を吹くとピアノではE♭すなわちミのフラットの音になる。逆にピアノのドの音と同じ音をアルトサックスで出すにはラの音を吹くことになる。楽譜を購入するときにアルトサックス用とかテナーサックス用などがあるのはこのためだ。もしピアノ用の楽譜に沿ってアルトサックスで演奏する場合は音符を6度上げて吹く必要がある。この移調作業はかなり面倒だ。チューナーには移調機能が付いているので基調をE♭に変更しておこう。これも電池交換でリセットされるので電池交換した場合は再度移調設定しよう。

 

ヤマハTDM-37Lを使うときはクリップでネックを挟み液晶表示版を見える角度に調整する。このとき、クリップがオクターブキーの動きを邪魔しないように注意する。音程調節はサックスを十分温めてから行う。また吹いているうちに変化するのでロングトーン練習が終わったら再度確認すると良いだろう。チューナーがE♭に設定している場合にサックスで中音域のドの音を吹くと表示板にCが表示されワイパーのようなインジケータがフラフラと表示される。このインジケータが中央に来ていれば正しい音程になっている。左に触れている場合は音程が低く、右に振れている場合は音程が高くなっている。音程は吹き方によって振れるのでロングトーンで音を安定させよう。音程の調整はマウスピースの差し込み深さを変えることによって行う。音程が低い場合はマウスピースを深く差し、高い場合は少し引き抜いてみよう。

 

ヤマハのTDM-37Lもそうだが、多くのチューナーにはメトロノーム機能も付いている。この機能も利用価値が高い。わたしの個人的な意見だが、音楽を極める上で一番難しいのがリズムではないかと思っている。たしかにメロディーに微妙なニュアンスを付けたりコード進行に沿ってアドリブを展開することも大変な事だろう。リズムというとそれなりにフォービートだとかボサノバとかに合わせられるのかもしれない。しかしCount Basieのスウィング感やMichael Jacksonのビート感はどうしたら身に付くのだろうか。練習では追いつかないような気もする。

 

リズムに対する最初の取り組みは音符の長さを正確に刻めるようになる事だ。まず全音符から始まって四分音符や八分音符などの々練習をする。このときメトロノーム機能を利用する。音符と同時に四分休符や八分休符などの休符の練習も必要だ。むしろ音符より休符の方が難しい。さらに三連符やシンコペーションを正確に吹けるように練習する。これこそ身体で覚え込む必要があるので長い期間をかけて繰り返し練習する。

 

多くのサックス教則本はリズム練習のパートが少ない傾向にある。それはリズム練習が単調な繰り返しになるのためページ数を抑えて他の項目の解説を増やすからではないかと思う。その点、レッスンで使用しているヤマハの教材は良くできている。リズム練習のパートも進捗に合わせて工夫されている。ただ一つ不満としてリズム練習のデモ演奏がCDに入っていないことだ。例えば楽譜に三連符(スウィング)の楽譜があるが単純な三連符との違いを確認したいではないか。たぶんヤマハの思惑としてはレッスンというパッケージを意識していてリズムのお手本は講師が吹いて教えるようにしているのだろう。

 

さてサックスの音は自分で作っていくものなので、自分へのフィードバックが必要となる。つまり自分の演奏を録音して確認することだ。そのために録音機が必要となる。録音機といっても本格的な録音機材ではなくポータブルなものだ。ただし家電メーカーが販売している会議用とかではなく、音楽専用のICレコーダーだ。この分野での専門メーカーとしてはTASCAMとZOOMがある。両社のポータブルICレコーダーともに高い評価を得ていて幅広く使われている。価格帯は1万円ぐらいからある。また音声だけでなく動画用のビデオレコーダーもある。家庭用ビデオレコーダーとは違い小型ビデオレコーダーがあると工夫次第では面白い映像が作れる。たとえばサックスに取り付けてフィンガリングの接写映像を撮ることもできる。

 

わたしは音楽用にiPod touchを使っているのでこれに音楽専用マイクを付けることにした。録音がそのままiPod touchに入るので加工・整理が便利に行える。マイクの候補としてはZOOM iQ5, iQ6, iQ7, TASCAM iM2がある。ZOOMのものはLightningコネクタに対応しているので最新のiPod touchに適合する。利用シーンとしてはレッスンのときに先生の音も含めて全体を撮ることを想定している。そこでZoom iQ7を使うことにした。

 

最近は殆どの人がスマホを使っているようだが、わたしは通信費対策としてガラケイを使っている。ガラケイだと何かと不便を感じるが、その代りにiPod touchを併用している。お気に入りの音楽だけでなくレッスン用の音源などもiPod touchに入れて気軽に聴いている。iPod touchにも内蔵マイクは付いているが、Zoom iQ7をLightningコネクタに付けて音を拾うと楽曲編集に利用できる高品質の録音が可能となる。Zoom iQ7をiOS機(iPhone/iPad/iPod touch)で使うにはHandy Recorderという無料のアプリをApp Storeからダウンロードする。使用方法はいたって簡単だ。

タツミ楽器が販売するバードストラップは首とサックスを繋げる紐のアジャスター部分に特徴のあるV型プレートが付いている。このプレートが鳥の羽を広げた形に見えるのでバードストラップと名付けたのではないかと思う。このプレートのお陰で首が締めつけられず、ゆったりと構えることができる。また首が当たる部分が革パッドになっているので付け心地もよい。

バードストラップはプレートや革パッドのサイズを選ぶことができ、カラーオプションも豊富なので好みに合ったコーディネイトが出来る。ネックストライプタイプの中ではベストのストラップだ。

ヤマハのTDM-37Lはアルトサックスのネック部にクリップで取り付けるようになっているので演奏中に楽譜とチューナー画面の両方を見ることが出来る。使用法はいたって簡単で、4つあるボタンのうち左端のボタンが電源とチューナー・メトロノーム機能切り替えスイッチになっている。

 

iQ7はLightningコネクタをサポートするAppleのiOS機(iPhone/iPad/iPod touch)に接続して使用するマイクだ。写真の下に突き出た端子をiOS機のLightningコネクタに差し込んでフリーアプリのHandy Recorderを立ち上げれば、ただちに使用可能だ。

音楽専用のレコーダーではなくiOS機を使うメリットは録音したデータを簡単にパソコンに取り込めることだ。電源もiOS機から供給されるので電池も不要なところがいい。

 

音のグレードアップ
12. 音のグレードアップ

 

サックスを鳴らせるようなって直ぐ自分が出している音がイメージしていたものから程遠いことに気が付く。まだ音を出せるようになったばかりなので仕方がないが粗雑な音だ。これが練習を積んで徐々に色艶のある音に変わって行くのだろう。サックスの音色は自分で作っていくものだが明確な目標を持つべきだ。明るく晴れやかな音とかダークで渋い音、ワイルドに荒れ狂う音など様々だ。その様々な音には相応しいマウスピースがあり吹き方も違ってくる。サックスの音色に関してはサックス本体よりもマウスピースへの依存度が高い。高級なサックスを購入してもマウスピースは付属品を使っていては個性が現れてこない。サックスをある程度吹けるようになり自分の思い描いた音を出したくなったら、それに適したマウスピースを選んで練習しても良いのではないだろうか。

 

わたしの目指すところは何と言ってもArt Pepperなので、彼の音に近づけるようなマウスピースを探してみた。それはわたしがサックスを始めてから1ヶ月ぐらい経った頃だ。Art PepperはM. C. Gregoryのマウスピースを使用していたが現在同じものは製造されておらず高価なビンテージものしかない。しかし各メーカーからM. C. Gregoryのマウスピースを模倣したモデルが出ているのでその中から選ぼうと考えた。

 

まずアルトサックスでジャズの演奏を目指す人にとって最初に手を出すマウスピースはメイヤーだろう。メイヤーにはG by Meyerというモデルがあり、このGがM. C. GregoryのGだそうだ。ということでG by Meyerを入手しようと渋谷駅西口の傍にあるウインドブロスに行ってみた。ここは池辺楽器店のサックス専門店で3階がサックス新品とアクセサリーの売り場になっている。

 

ウインドブロスにはマウスピースも豊富にあり中央のショーケースに展示している。この中からメイヤーの定番モデルとG by Meyerを手にとって比較してみた。店員さんと話しているうちにArt Pepperの話題になり、そこで薦められたマウスピースがウインドブロスが企画してゴッツ作成のHollyWoodというマウスピースだ。これはM. C. Gregoryのマウスピースを再現して作られていて若干ローバッフル・スモールチェンバーの作りになっている。店員さんは本物のM. C. Gregoryに忠実であることに誇りを持っているようだった。手に取ってみると丁寧な仕上げと重みを感じる質感が特徴的であった。見た目も艶消しのラバーに金色のロゴが入っていてスタイリッシュだ。

 

マウスピースを買う場合にも自分のサックスを持って行って試奏することが望ましい。リードとの相性や吹き方にも関係するので調整が難しいが、出てくる音の違いはサックス自体の吹き比べよりも明確に現れる。わたしは店頭で試奏する実力が無いのでリードをあてて確認した程度で購入を決めた。後日サックスに付けて試してみたが、このHollyWoodというマウスピースは色々な音がでる表現豊かなものだった。しかし色々な音を出せるということは逆の見方をすると音が安定しない危険性があり、プレーヤーの力量が顕わになるマウスピースだ。このマウスピースを上手くコントロールできるように練習していくと徐々に自分の音が作られるのだろう。

 

実はマウスピースと一緒にリガチャーも購入した。リガチャーについても選択の幅が広く悩むところだ。リガチャーについては評判のよいハリソンGPを購入した。このリガチャーは逆締めスタイルになっていて、締めつけるネジがリードとは反対側にくるようになっている。そしてリードを押さえつける部分が4ヶ所に限定することによってリードの振動を妨げないように工夫されている。ハリソンのリガチャーを使うとリードの鳴りが良いことが初心者のわたしにも分かるくらいだ。またハリソンのリガチャーは逆締めなので通常のマウスピースカバーには収まらない。仕方ないのでマウスピースカバーもハリソンに合ったものを購入した。

 

さらにマウスピースを保護する目的のマウスピースパッチも購入した。マウスピースパッチは、ノナカのマウスピースクッション0.20mmにした。マウスピースパッチはマウスピースの保護を目的としているが、アンブシュアに微妙な影響を与えるので慣れるまでは苦労する。裸のマウスピースをくわえていたときは上の前歯をスライドして調整できたのだが、マウスピースパッチが付いていると上の前歯の位置の調整にくわえ直さなければならない。また若干がだ厚みがあるのでその分の感覚が変わってくる。しかし、マウスピースを大切に扱うために慣れなければならない。

 

さて、マウスピースを変えたのだから、それに合ったリードについても検討する。レッスンがスタートした時点ではオーソドックスなバンドレンのトラディショナル2.5を使用した。そこで少しジャズ向けのバンドレンJAVAファイルドカットに変更した。硬さは2.5と3を試している。リードについてはリコなどもポピュラーなので色々と試したいと思うが、まずはJAVAに決めて自分の音を確立することを目指すことにした。

 

マウスピースからリードまでの一連の変更は、今後の自分の音を作るための変更だ。それまで使っていたものはサックスで初心者が安定した音を出すことを目的としていた。今の目的は自分の音を求めることにステップアップした。サックスを始めて1ヶ月後というタイミングは少し早いとは思うが方向性に確信を持っているので、この方向の音を追求していく。マウスピースを追求しだして色々手を出すと自分の方向性が曖昧にになってしまうリスクある。しかし道具の観点から見た自分の音作りの中心はやはりマウスピースではないかと思う。わたしの場合、これでひとまず道具は固定することにした。次に道具を変更する時期は自分の吹奏レベルが上がってからだ。

サックス専門店ウインドブロスがプロデュースしてゴッツによって作られたマウスピースだ。M. C. Gregoryのビンテージマウスピースを参考にして作られており、Art PepperやPaul Desmondなどのウエストコースト・ジャズを目指したマウスピースと言える。特徴としては若干ローバップル・スモールチェンバーの作りになっていて、オープニングは4番が1.70mm、5番が1.80mmになっている。外見は金色のリングがM. C. Gregoryを伝承していることを示している。

ハリソンのリガチャーは逆締めでリードに接触する部分が極めて少ない。リードの振動を妨げない設計になっている。リードを押さえる部分がHarisonの頭文字Hになっていてデザイン性も優れている。

この写真はハリソンのリガチャーをマウスピースに付けた状態のものだ。ハリソンのリガチャーは割れやすいので、ネジを締めつけすぎないように気を付ける。

このマウスピースとリガチャーの組み合わせの実力を見極めることはわたしの実力では未だできないが、吹いていて相性の良さを感じる。

バンドレンのリードはカットの違いによって6種類のモデルがある。最も一般的なものが青い箱のトラディショナルだ。日本を代表するアルトサックス奏者の渡辺貞夫さんはトラディショナルの2.5を使用している。

ジャズ用といわれるものとして緑の箱のJAVAと赤い箱のJAVAファイルドカットがある。他にもV16やZZがジャズ向けのカットとなっていて、どれを選ぶかはプレーヤー次第だ。ちなみにファイルドカットとは、リードの削り際のところの表皮が剥いてあるものをいう。アンファイルドカットは削り際がUの字になっている。

 

サックスを吹こうと決めてから一気にここまで準備を進めてきたが、これで思い存分に練習ができる。

 

 

End of 〈始まり編〉

助走編へと続く ≫

≪ Homeへ戻る

© 2023 by Name of Site. Proudly created with Wix.com

  • Facebook App Icon
  • Twitter App Icon
  • Google+ App Icon
bottom of page